価値観や人生観が合わないと楽しめない【感想】償い
作者・作品とも全く知らなかったものの、数軒回った古本屋の全てに廉価で並んでいたので最後のお店で手に取り、本裏の「感動長編ミステリ」との言葉に興味を惹かれて読んでみた。。。矢口敦子著、幻冬舎文庫、平成20年1月31日 9版発行
概要
将来を有望視された医者が、息子と妻の死を機に人生を投げ捨てる。
ホームレスとなった主人公は、何かに導かれるようにとある東京のベットタウンへと流れつく。
過去に一度だけ訪れたことのある町。
その日の食糧を求めて町を彷徨う中、偶然火事の第一発見者となってしまう。
火事現場から刺殺体が発見されたことから、その町で起こる連続殺人事件へと巻き込まれた主人公。
ある少年との出会いが、さらに主人公を事件の深みへと引きずり込む。
かつてこの町を訪れた際に命を救った少年。
事件を探るうち、その少年がこの町で起こる連続殺人事件の犯人ではないかと疑い始める。
一人の命を救ったことが、数年後、何人もの命を奪う結果を生む。
一人仕事に没頭したことが、家族の命を奪う結果を生む。
一人大きな十字架を背負い、苦悩する主人公が行きつく先と事件の真相とは・・・
私的評価
17点
要は、何があっても「生きて償え」ということ。「生きて償え」という言葉に真っ向から反論する気はないが、如何せん作者と自分とは価値観が違い過ぎる。不愉快になるだけなので、もうこの作者の作品は読まない。
感想
事件・作品の本旨とは直接的には関係ないが、とある登場人物の言葉に「刑罰は報復のためではなく、矯正のため~」とある。
ここが価値観の差異の根源。
作中人物の発言がそのまま作者の価値観ではない、ということは理解しているつもり。
しかし、本作の本旨が「生きて償え」という点にある以上、それ程かけ離れた価値観ではないはず。
なので作者の価値観と合致する発言だと仮定して評する。
話がややこしくなるので具体的な理屈は割愛するが、結論から言えば、刑罰の目的は矯正ではない。
矯正又は教育は、あくまでも刑罰の波及効果であり「目的」ではない。
例外は少年犯罪の場合のみ。
少年犯罪の場合は矯正に主眼があるため、絶対的不定期刑も認められている。
「何年でこの子は矯正される」とは言えないから。
矯正が刑罰の目的だと考える人は、大人の刑罰に絶対的不定期刑が禁止されていることをどう考えているのか。
どう考えても、刑罰は自分の行為に対する応報。
被害者個人に報復する権利が認められない以上、国家が個人に代わって報復を行っているとも言える。
執行猶予や仮釈放の制度等は、波及効果との兼ね合いの末に作られた制度に過ぎない。
この問題は、突き詰めると刑法における責任論を経て「人は自らの意思を持ち、自らの行動を選択しているのか」というところに行きつく。
この問いに対し、自分は「YES」と答える価値観を持っているので「刑罰の目的は矯正ではない」という結論に達する。
逆に「NO」と答える人は、「人に自由意志はなく、自らの選択や行動は全て環境によって決定づけられている」という価値観を持っていることになるため、結果、「刑罰=矯正」となる。
皆さんはいかがでしょう。
もう1つ、価値観の相容れない点。
「人の心を殺しても罰せられない」
この言葉は、一つの章にもなっているので作者の価値観と一致していると考えて問題ないはず。
完全に意味不明な言葉の羅列。
「言葉の暴力」という言葉に匹敵する程のナンセンス。
侮辱罪や名誉棄損、民事上の責任…
多々人の心に対する応報は数多存在する。
心の傷は一生癒えないなんて言葉、綺麗事を並べて満足する善良な市民の自己満足。
被害者意識や被害妄想の産物。
自虐意識とその反省が全うな人間のあるべき姿と信じてやまぬ狂信的な価値観。
左翼大好き、自己批判!
こういう人間が日本を駄目にした。
そのことをそろそろ自覚して欲しい。
これからの日本で生きる自分としては迷惑。
放物線はそこそこ良いのに、投げた物とその着地点に大きな難がある作品。
サヨク的な狂信者の皆さん、貴女方の感動のために書かれた作品です。
自分はこの作品には共感も感動もできません。