【感想】モンキー・パンチは関係ない『ルパンの消息』

最終更新日

横山秀夫著。カッパノベルズ2005/5/25の初版第1刷発行。テレビでルパン三世が放映された翌日に見つけ、なんとなく手にした一冊。横山秀夫氏の作品は「クライマーズ・ハイ」「出口のない海」「半落ち」など映画化された作品が多いことは知っていたが、手にとったのは初めて。

概要

「15年前に自殺として処理された女教師の転落死は、実は殺人事件である」

警視庁の上層部に直接もたらされた匿名のタレこみ情報。

殺人の公訴時効は15年。

その期限まで残り24時間。

三億円事件を時効にかけてしまったことを忘れられぬべテラン刑事の陣頭指揮の下、事件解明に躍起になる捜査陣。

犯人として名指しされた当時高校3年生の3人への取り調べが進むにつれ、当時の様相が徐々に明らかとなる。

「ルパン作戦」

高校生活最後の思い出として3人が決行した期末テスト奪取計画

事件の真相が右へ左へと奔走されながら、いよいよ時効が完成する時、15年の時の流れがその事件に更なる意味合いを重ねる。

私的評価

80点

いくら加筆修正されてるとはいえ、これが処女作だとは思えない面白さ。

感想

「15年も前の話を、何故そこまで鮮明に思い出すことが出来るのだ」みたいな突っ込みさえ入れなければ、85点以上の高得点は間違いなし。

3/4ほど読み進めたところで少々中だるみはあるが、「そろそろ休憩いれるか」と思う前に一気にクライマックスへと加速する。

「引き込まれるとはこのこと!」というぐらいぶっ通しで読まされた。

ほんの数行しか出てこなかった話を上手く思い出させてくれたり、話の緩急がはっきりしていて抜け出せなくなったり、とにかく読み切るまでは本を離せません。

過去の話以外に謎解きらしい謎解きはない。

それでも謎解きをしている空気があるのはどうしてなのか。

売れっ子には売れっ子になる理由があることを再認識した作品。

これは誰が読んでも楽しめるはず。

王道でありながら、「王道が故の退屈さ」を感じさせない。

こんな作品に巡り合えるから古本漁りは辞められない。

「今は亡きサントリーミステリー大賞」の受賞作でありながら、15年もの間日の目を見なかった作品だそう。

それが作中の時効15年というものと相まって、ぎりぎり時効完成前に世に出たとのこと。

因縁ともコジツケとも言える宣伝文句、普段なら大嫌い。 でも、殊この作品に関しては肯定的に受け止めてしまう。

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