なぜ、もっと早く読まなかったのか。【感想】配達あかずきん
デビュー作かつ、成風堂書店事件メモシリーズの1作目。”本格書店ミステリ”の言葉で購入を思案し、「東京創元→日常の謎」が頭に浮かんで購入決定。大崎梢著、創元推理文庫2009/7/10 6版
概要
駅ビルの6階に構える中型書店・成風堂書店。
そこで働く社員・杏子とアルバイト・多絵とを中心に巻き起こる
5つの謎を追った短編連作ミステリー。
<パンダは囁く>
ある老人から託された探求書リスト。
そこに記された意味不明な文字の羅列はどう解読すればいいのか。
ヒントは、出版社が「パンダ」ということのみ。
日に日に弱る老人が、懸命に訴え求めるその本とは…
<標野にて、君が袖振る>
漫画「あさきゆめみし」を購入後、行方不明になった母親。
その母親は、20年前に事故で息子を亡くしていた。
その漫画を通して、母親は20年前の事故に何を見たのか。
そしてその行方は…
<配達あかずきん>
週一回の、美容院への雑誌の配達。
未だ誰も中を開いていないその雑誌には、それを手に取った有閑マダムの盗撮写真が挟まっていた。
いつ、どこで、誰が、何のために…
<六冊目のメッセージ>
ここ5週間、毎週火曜日に店員の薦めるまま、1冊の本を購入していたというお客さん。
しかし、書店に心当たりの店員はおらず、本のセレクトも当店の書店員でないことを示している。
一体誰が…そして今日、新たに選ばれた6冊目の本が恋を…
<ディスプレイ・リプレイ>
出版社主催の販促ディスプレイコンテスト。今回は、今一番人気のある少年漫画。
特賞を狙うべく苦心し、漸く完成した販促台が何者かに荒らされた! 時を同じくして、コンテスト対象漫画に盗作疑惑が…
私的評価
80点。
積読に気付かず、文庫と単行本の両方購入。積読の中に続編も揃っていたので、早速読みます。
感想
期待以上!
久々にいいものを発掘した。
元書店員が書店を舞台にしているだけにリアルな上、出てくる作品名や作家名にまで一喜一憂。
井上夢人の「ダレカガナカニイル…」とか、「知ってる!読んだ!でも何でこれチョイス?」
フェア台で”村上龍特集”やっているということは「あの作品が出た頃かな?」
様々な想像が膨らみ、グッと作品に親近感が湧いて作品の中に身を置かせる。
読書家でなくても楽しめるが、定期的に本屋へと足を運ぶ人ならより一層楽しい作品。
加えて、若干雑な部分も散見される謎解きも、十分に納得感があって良い。
テンポも悪くなく、キャラ立ちもしている。
ただ、空気感に「これぞ大崎梢!」という独特のものを感じなかった。
でもこれは、シリーズを読み重ねるうちに自然と感じられるようになるでしょう。
日常の謎系なら北村薫氏の作品より好きかもしれない。
なぜ今まで読まなかったのか。
書店が舞台の作品は基本的に手にしてきたつもりなのに。
ちなみに、書店が舞台の作品でも「書店ガール」だけは受け付けなかった。
自分の中で、書店モノ、書店員モノのスタンダートは本シリーズに決定。