筒井康隆の原点【感想】東海道戦争

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大阪人である自分は、タイトルからして惹かれる。筒井氏の作品一覧でタイトルと紹介文を見た時から読みたかった作品。中公文庫の昭和60年12月20日第13版。表題作の「東海道戦争」の他、「いじめないで」「しゃっくり」「群猫」「チューリップ・チューリップ」「うるさがた」「お紺昇天」「やぶれかぶれおオロ氏」「堕地獄仏法」収録。

概要

朝起きると、そこは戦場になっていた。

東京と大阪との間で戦争が始まったのだ。

東海道沿いに進撃してくる東京軍に対し、大阪と京都の府境で待ち受ける大阪軍。

平和ボケした日本の上空では戦闘機が飛び交い、地上では戦車や装甲車が所狭しと行きかう。

市民兵が組織され、テレビ中継がされる戦争。

取材へと駆け付けた在阪作家は、銃と手榴弾を手に最前線へと送りこまれた。 そこで作家が観た光景は…

私的評価

80点

本作は筒井氏の処女作品集だが、他の作品に比べて読みやすい作品集。非常に満足度が高い。

感想

大阪の東京に対する敵対心、マスコミ批判や自衛隊に関する議論を上手く風刺した作品。

贅沢を言えば、その先を読みたい。

主眼が戦闘にないので主人公が戦死した時点で物語が終了するのは分かるが、単純に戦争の結末が知りたい。

状況的には大阪軍の大敗な雰囲気だが、東京もんにひと泡吹かせたいと願うのは自分だけではないはず。

もしかして、筒井氏の膨大な作品群の中に続きとなるエピソードがあったりするのだろうか。

表題作以外の作品も、筒井氏の代名詞であるドタバタだけでなく、少しホロリとさせてくれるいい話や皮肉たっぷりの作品まで、非常に様々な色で楽しませてくれる。

筒井氏の才能を改めて思い知った。

期待を裏切らない、さすが巨匠です。

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