【レビュー】筒井康隆らしからぬ「富豪刑事」

最終更新日

かつて深田京子主演でドラマ化された作品。正直、当時は筒井氏の作品とは知らず、TVCMから感じる雰囲気と深田京子主演ということで「安っぽいドラマ」という印象しか持たず、完全に無視していました。手元にあるのは新潮文庫の平成17年38版。

概要

大富豪の刑事が金に任せて事件を解決していく物語。

私的評価

60点

「なるべく多くの作品を読みたい」という人にはオススメするが、「面白い本が読みたい」という人にはオススメしないレベル

感想

キャデラックを乗り回し、バハマ産の1本8000円以上する葉巻をふかす。

犯人を捕まえるためだけに世界的権威のある人物を招いて会社を設立したり、町一番の高級ホテルを貸し切りにしたり、犯人要求の身代金を出したり…

「お金は万能」と言い聞かされるような、しかしそこには少し皮肉が入っているような作品で、設定のバカバカしさに「筒井康隆らしさ」は垣間見えるものの「面白かった」とは言い難い。

1つ残念なのは、主人公の親父さんの秘書、主人公に思いを寄せる女性が「美人」という設定だということ。時には主人公のために体をはる重要な人物なんですが・・・

ここは不細工にして欲しかった。

そして、美人さえもお金で用意する。

でないと「やっぱり金持ちか・・・」と貧乏な自分はどんどん卑屈になってしまいます。

主人公が、絶世の不細工に思いを寄せる方が、「心は金では買えない」みたいな分かりやすいメッセージも出せたのではないかと思います。

筒井氏の主眼が全く異なるので一概には言えませんが、筒井氏のミステリーなら「ロートレック荘事件」の方が面白かったです。こっちは真面目なミステリー。設定がぶっ飛んでいるわけでもなく、解決方法が突拍子もないわけでもない。しかし、最後には感嘆させられてしましました。

筒井氏をSF作家としか思っていないような人、本格ミステリー好きな方でも「ロートレック荘事件」は満足すると思います。

人によっては「騙された!」と思うかもしれませんが、筒井氏の筆力に感動するハズです。

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