【レビュー】要するに分裂病?「ダレカガナカニイル・・・」
岡嶋二人氏の作品で初めて読んだのは「99%の誘拐」。その後「クラインの壺」を読んで一気にファンになり、井上夢人氏が岡嶋二人氏の片割れと知ってからは、古本屋でも意識して探しています。手元にあるのは1992年2版、新潮ミステリー倶楽部のものです。
あらすじ
警備会社に勤務する主人公が、とある問題を起こし左遷される。その転属先での仕事は新興宗教団体の施設警備。
地元住民の過激な反対運動に辟易しながら初日の仕事をこなしていた主人公に、さらなる災難が降りかかる。
目の前で、教団施設の火災が発生、教祖が焼死する事件が起こってしまったのだ。
その瞬間から主人公の頭の中に「私は誰」「ここはどこ」「何も見えない」などの幻聴が聞こえるようになる。
幻聴は何を自分に伝えようとしているのか・・・
事件後から毎日見る夢は何を示してしるのか・・・
自分の頭がイカれてしまったのか・・・不安と恐怖、そして新しい恋・・・
そして導かれる真実。
私的評価
68点
井上夢人氏らしい作品だと思います。しかし、「メデューサ、鏡をごらん」程の感動はありませんでした。
感想
岡嶋二人氏はすでにコンビを解消。ミステリー界にとっては損失ともいえるかなり残念な事態でしたが、少し安堵もしました。
古本メインの自分としては、新作が出ていることを知っても入手出来るのはかなり後になってからですから。
すでに解散しているのであれば、そんな悶々とした日々を過ごさずに済みます。じっくり少しずつ手に入れて全作品を読むことが出来ます。なかなか廉価では手に入りませんが・・・
そんな中で見つけた「ダレカガナカニイル・・・」
幻聴と上手く会話が出来るようになるまでの部分は、正直、なかなかページが進みませんでした。
トリックというか仕掛けというか・・・いまいちパッとしません。
結末も無難。
もっとリアリティーが欲しかったです。もう井上夢人氏は本格は書かれないのでしょうか?
時代の先を行く作品は、もう読めないのでしょうか?
正直、読後感は「残念・・・」でした。不完全燃焼。井上夢人氏も不本意な作品と思っているのではないか?と思えるような作品でした。
他の読者の評価はどうなんでしょうか?ちょっと気になります。