意外と続編が気になる【感想】オカルトゼネコン富田林組

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第10回ボイルドエッグズ新人賞受賞作。あまりメジャーは文学賞とは言えないが、「鴨川ホルモー」も受賞している文学賞。メジャーな文学賞を受賞している駄作を掴むぐらいなら、本作の方が圧倒的に有意義。蒲原二郎著、産業編集センターの2010/3/30第1刷発行

概要

中卒よりも恥ずかしいとされるFランク大学卒の田中たもつ。

アルバイトでさえ雇って貰えないその田中が、超一流ゼネコン富田林組に就職することとなった。

上場企業の正社員となれることに浮かれながら入社式のため意気揚々と本社ビルへ赴くと、会場入り口で人事部の人間に声をかけられる。

「君は特別扱いだから別室へ」

訝しながらも配属先の担当者だという美人につられて辿りついた先は、一般社員が知ることのない地下の一室だった。

「庶務二課資料調査室」通称調査部。

あり得ない大きさの神棚と「鬼頭組」と書かれた提灯の掲げられた室内で、「入社の儀式」として交わされる杯。

そして新入社員歓迎会の恒例儀式として頭に振り落とされたビール瓶。

丸二日間生死の境を彷徨い、逃げれば家族が神隠しに合うであろうと部長に予言され、K察庁長官直々の説得を受けて逃げ道を無くした田中。

決して表にでることない「自衛業の方々」による秘密のミサイル基地現場視察や、意図的に隠されているとしか思えない宗教施設での「霊気測定」などといった仕事をこなす日々を送ることとなる。

絶対にヤバい・・・

などと思ってはいたものの、破格の給料に惹かれてリーマン生活を謳歌していた。

そんなある日持ちこまれた仕事。

東北の山奥に建設中のとある空港で、原因不明の事故が相次ぎ死傷者が絶えないので何とかしてくれ。

どうやらそこには、かつて処刑された切支丹の祀られたお堂があり、そこに封じ込められた悪霊が工事を邪魔しているようだった。

地元自治体や物流業界大手企業の社長、●沢元党首直々の要望などに振り回されながら、新人・田中、文字通り粉骨砕身、初の大仕事へと巻き込まれる。

私的評価

65点。

軽いものが読みたいと思って手にした一冊。サブカル色の強い装丁に惹かれて積読にノミネートさせたと記憶している。装丁・タイトルに恥じない軽さで、その点は満足。低予算にしては良く出来たB級映画を見たような、プラスにもマイナスにもならない作品。

感想

表現やリズムは中学生向けか?と思わせるものである一方で、時折混ざる小ネタは30代半ば以降の世代でないと分からないのではないかと思う。

そこが微妙なバランスを保っているともアンバランスとも取れる。

自分は嫌いじゃない。

だからって、人に薦めるような作品でもない。

普段全く読書をしない人に「どう?」と聞かれれば「読んでみたら?」と答えるものの、ある程度本を読む人には「別にわざわざ読む必要もない」と答えると思う。

ヴィレッジヴァンガードみたいな雰囲気の部屋にしたい人には、インテリアとして本書を飾るのも有かな?

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