【感想】青春の切なさと刹那さ『六番目の小夜子』
恩田陸氏のデビュー作。NHKでドラマ化もされていた(2000年)のでご存知の方も多いハズ。どの古本屋にでもあるイメージなのに、探すとなかなか見つからない。手にしたのは新潮文庫版。
概要
とある地方の進学校には十数年間にわたってある儀式が行われていた。
それは、三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が人知れず選ばれ、誰にも知られることなくある儀式を行う。
そして今年は6番目のサヨコが選ばれる年だった・・・
赤いバラ、
(謎の?)転校生、
過去のサヨコ、
古参の教師、
高校生という限られた時間、恋に受験に友情に、人生で一番短い青春が絶対に忘れられないものになる。
私的評価
73点
今、30代半ばぐらい方なら比較的評価が高いはず。 否応なしに自分の高校時代を思い出させ る作品。
感想
ホラーといえばホラーだが、読後感は完全に青春小説。
今まで忘れていた様な些細なことを思い出して感傷に浸ったり、久々に当時のツレと連絡をとりたくなったり、黒歴史を思い出して布団でのた打ち回ったり。
ものすごく、淡い気持ちにさせられる。
誰もが通る道を丁寧に書かれているので、共感できる部分が必ずあるはず。
中学・高校と男子校で文化祭がなかった自分でも、高校生時代ならではのノリに共感しっぱなし。
一応ホラー要素があるはあるものの、“じんわり怖い”雰囲気で後をひく怖さではない。
それよりも、「青春の切なさと刹那さ」
これに尽きる作品です。
この作品の青春面をさらに純化させたのが「夜のピクニック」にあたるのかなと。
今、壁にぶち当たっている人、この作品を読んでみましょう。
昔の自分を思い出して感傷的になると同時に、「がんばらな!」って気にさせてくれる作品です。
まだ「夜のピクニック」を読んでいない人はそちらから読む方がいかもしれませんが・・・「夜のピクニック」も映画化されているので、映像で見ておくのもありかと。