【感想】期待値を下げて読んで欲しい『タイトルマッチ』
手元にあるのは講談社文庫の2006/1/27第7刷。1984年の作品なので岡嶋二人の初期作品ですね。コンビ解消から30年。いつまでも色褪せない作家で居て欲しいですが、難しいですかね。。
あらすじ
ボクシング元世界チャンピオンの子供(10ヶ月)が何者かに誘拐された。
犯人からの要求は、2日後の世界タイトルマッチに「ノックアウトで勝て」というもの。
しかし、ボクシングにおいて「勝て」という脅迫は成立しない。
なぜ犯人はその様な要求をしてきたのか。
雑誌記者やあて馬にされたボクサー、読めないチャンピオンサイドの動き、
タイムリミットが迫る中、翻弄される捜査陣。 そして、運命のタイトルマッチが始まる。
私的評価
70点
岡嶋二人の作品というだけで、下駄を履かせてしまう。それでも、氏の作品でオススメランキングを作ったら、後半に入ってしまうレベル。
感想
正直、「また賭博関係か」と簡単に先入観を持って読み始めてしまった。
そして、ひっかかった。
特別目新しいトリックが用いられている訳でもないのに。
偶然の出会いが事件をややこしくしているものの、無理なくスマートに、そしてスピーディーに話がまとまっていく。
岡嶋二人氏らしい、期待を裏切らない作品です。ただ、代表作とは言えない。岡嶋二人氏の作品群の中ではオーソドックスな部類に入るものでしょう。
出来ることならもう少し、主人公たちがタイトルマッチへと向かう気持ちが強くあって欲しかった。
容疑者を殺してしまうのも残念。もう少し捻って欲しかった。別の方法があったのではないかと思ってしまう。
「誘拐の岡嶋」「人さらいの岡嶋」との異名を取る岡嶋二人。
とはいえ、今の若い方には聞き慣れない名前でしょう。
井上夢人と徳山淳一の合作ペンネームだということを知らない人も多いハズ。
出来ることなら多くの人に知って欲しい。
でも、本作から岡嶋二人の世界に入るのはオススメしません。
何作か読んで、「もっと他の作品も読みたい!」となってから手にして、「ま、中にはこういう作品もあるよね」という程度で納めておくのがよろしいかと。