初見なら、期待値に対しての満足度は高い【感想】悪夢のエレベーター

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正直、全く期待していなかったが、十分に満足な一冊。紹介文に”コメディーサスペンス”とあったため、「どうせ裏切られる」とは思いながらも”キサラギ”や”アフタースクール”の様な作品であることを期待して購入。木下半太著、幻冬舎文庫の平成20年9月20日15版発行

概要

強烈な頭の痛みに目を覚ますと、そこは故障して動かないエレベーターの中だった。

妻の陣痛が始まったというのにこんなところで足止めを食っている訳にはいかない。

一緒に閉じ込められたのは、オヤジ・バッタ・ゴスロリの見知らぬ3人。

誰も携帯電話を持っておらず、非常ボタンも作動しない。

焦る主人公・小川とは裏腹に、妙な落ち着きを見せる3人。

あがいても無駄だと思い知った4人は、助けが来るまで、気を紛らわせようと秘密告白ゲームをすることに。

小川は浮気相手の部屋から出てきたところ。

しかし、それは言いたくなかった。

そんな小川とは対称的に、次々と突拍子もないことを告白する3人。

オヤジは、今も現役の空き巣。

前科持ちであり、盗みに入った家で少女をレイプした過去を持つ。

ニートであるバッタは、幼女を誘拐して悪戯をしたとのこと。

そしてゴスロリ、彼女はとある施設に放火して全焼させていた。

そんな3人に囲まれて小川の精神状態は限界へと達する。

極限状態の密室で、小川がとうとう腹を括った時、更なる事件が勃発する。

私的評価

70点

TVドラマ、舞台、映画、漫画とあらゆるメディアで展開されているデビュー作にして、悪夢シリーズの第一作。「重たくないものが読みたい。かといって青春モノの気分ではない」という気分の時のための作品。

感想

作者は劇団の方。

最初は描写らしい描写が少なく、「軽すぎるなぁ」と駄作な雰囲気を感じてがっかりしていたものの、木下氏が舞台役者であることを頭に入れて読むとどこかしっくりくる。

舞台向き、若しくは映画(映像)向きでしょう。

わざわざ確認しようと思えるほどの興味はないが、キャストとスタッフさえ下手なのを選ばなければ、十分に良い映像作品となっているはず。

コメディーとしてもミステリーとしても、十分及第点な作品。

180度捻った後にさらに180度捻られ、捻じれたまま元の面と繋がるどんでん返しも良い。

「思った以上に上手いな」というのが率直な感想。

軽い作品が読みたい時には非常にベストな一冊。

決して薄い本ではないのに2時間ほどで読了できるので、じっくり家で読むのではなく、移動中とかに読むのに最適でしょう。

久々に、期待値に対しての満足度が高い一冊。

ただ、タイトルが正直過ぎる。

もう少し捻れば、もっと良い印象になるはず。

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