米澤作品は初期が好き【感想】犬はどこだ?
米澤穂信著、東京創元社の2010年5月21日7版。何度も言うように「タイトルは大事」。タイトルと内容の合致。これが作品の完成度を決定づける。
概要
病気療養を機に、勤めていた銀行を辞めて開業した調査事務所。
調査事務所といっても業務は1つ。
犬捜し。
事務所を借り、文字通り看板を掲げ、本棚を設置し、最後に電話を接続。
ようやく一息つけると思った矢先、事務所の電話が鳴る。
広告も打たないうちから何故?誰?と訝しく思いながらも受話器を取ると、初仕事の依頼だった。
しかし・・・
「孫を探して欲しい」
全くの想定外!犬専門でやろうと思っているのですが…
体よく断ることも出来ず、不本意ながらも受任することになってしまった。
途方に暮れながらも重い腰を浮かしたその時、またも電話が…
「この古文書を解読して欲しい」
全く、人生は思い通りに行かないものだ。
思った通り、結局この依頼も断れず…
運よく捕まった高校時代の後輩を巻き込み、取りあえず調査開始。
いやはや、こんなことになろうとは…
孫探し班と古文書班に分かれて(と言っても各班1名)調査する内に、微妙に寄り添う2つの依頼。 すれ違い続けた2本の糸がようやく交わった時、それは1つの「事件」へと…
私的評価
78点
米澤氏の作品は好み。なので、多少色眼鏡で見ていることは否定出来ないが、友人にも薦めることが出来るレベル。
感想
サブタイトルの「THE CITADEL OF THE WEAK」。
英語が大の苦手な自分には、全く意味が分からない。
しかし読後に意味を調べたところ、妙に納得。
改めて「タイトルは大事」と思い知った。
読後に本を閉じて表紙に目をやった時、「こいつ頭いい!」と思わせるタイトルだとそれだけで評価は高くなる。
作品の本質というか、核を一言で射ぬいたタイトル。
そんな作品に出合えると、それだけで誰かに薦めたくなる。
本作の場合…
サブタイトルの意味を理解して7点の加点といったところ。
妙な納得はあっても、絶妙感がなかった。
あと、帯。
「衝撃のラストを見逃すな!!」との触れ込み。
分不相応とも、嘘があるとも言いません。
しかし、帯を目にした後では、騙されることを知った上でドッキリを受けているようなもの。
読み方を限定してくるような文句には、苛立ちが抑えられない。
この触れ込みが無ければ、さらに評価は高かったでしょう。
米澤氏の作品らしい雰囲気とテンポには満足。
独特の空気で飽きを感じさせずに最後まで読み切らせる。
この空気感にハマっています。
米澤氏の全作品に漂う柔らかさ。
カリスマ性を感じるわけではないが、「この人の作品を読みたい」と思わせる魅力がある。
もちろん、この作品も裏切らない。
米澤氏の作品は平均点が高い。