バナナの皮は、よっぽど条件が揃わないと踏んでも滑らない。【感想】 死亡フラグが立ちました!

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「チームバチスタの栄光」を筆頭に、スタートダッシュを決めた「このミス」大賞シリーズが、まだ辛うじて「勢いがある」と思えた時期の作品というイメージ。最終候補には残ったものの、大賞も優秀賞も逃した作品。七尾与史著、宝島社文庫2010/12/20第7刷発行

概要

その殺し屋からジョーカーのカードを受け取った者は

24時間以内に確実に死ぬ。

それも「完璧」な”事故”で。

三流オカルト雑誌に生活を握られているフリーライター陣内は

その雑誌の存亡と自己の生活を賭けて「死神」と呼ばれるその殺し屋を追うはめに。

しかし、都市伝説としか思えない存在に何の糸口も見えず途方に暮れていた。

そんな折、知り合いのヤクザの組長が死神に殺されたという噂を耳にし、事態は一変する。

組長のかたき討ちに燃えるヤクザと、個人投資家の頼りになる先輩。

きっかけを掴んだ陣内達は、徐々に死神へと近づいていく。

時を同じくして、汚職事件に絡んだとされる大物政治家の秘書が交通事故で亡くなった。

どこから見ても偶然の重なった不幸な事故に

妄想刑事と呼ばれる署内の厄介者・板橋は疑問を持つ。

そして耳にした死神伝説。

殺人事件だと直感した板橋は、新人刑事を連れて妄想の裏付けを集め 独自の理論で死神の正体へと迫る。

私的評価

71点。

この頃の作品をピークに、「このミス」大賞シリーズは年々質が下がったと記憶する。新人賞の作品でこの出来なら十分かと。「興味深い」「のめり込む」作品ではなく、「頭を空っぽにして刹那的な興奮を得る」タイプの作品。

感想

タイトルから受ける印象と寸分違わぬ軽いノリ。

そもそも、殺し屋の仕掛ける殺害方法が「バナナの皮」。

スベッてコケて頭打って死ぬ。

それだけではないものの、しつこいぐらいバナナの皮を仕掛けてくる。

正直、そういうノリも嫌いやない。

しっかり腰据えて、がっちりのめり込んで、重たくも没頭する。

または

雰囲気に酔わされ、物語の中を漂い、ノスタルジックな感情に浸る。

それはそれで面白いし、むしろそっちの方が好みだが、たまにはこんな作品もいい。

「火の鳥」が大好物だが「浦安鉄筋家族」も面白い、みたいなもの。

このプロットなら、「もっと重厚感のあるハードボイルド的な作品にしても十分読み応えがある作品になっていたのではないか」と若干残念な気もするが、結局「これはこれでいい」というところに帰着する。

もう一点残念な個所を挙げるなら、編集長の存在。

もっと事件に絡められそうなポジションであり、そうなればもっと面白かったのではないかと。

予定調和的になってしまうのは否めないが、キャラが立っている割に使いこなせていない。

解説によると、発行にあたって大幅な改稿・削除が行われたそう。

そこにもう1つ2つドラマがあったのでは?

編集長の絡むエピソードが書かれていたのでは?

そう思うと、応募時の作品が読みたくなる。

とはいえそれなりに楽しめたので、また「これはこれでいいか」となる。

深さを感じさせない作品なだけに、読み手も多くを求めることなくサラッと流してしまえる。

「売出し初めの若手俳優を起用したB~C級邦画やな」と思っていたら、2019年にドラマ化されていたそうで。

「そらそうやろな」と。

というか、この作品の頃から「このミス」大賞シリーズは、明らかに映像化を一番に意識した作品が受賞ないし出版されるようになった印象。

もともとは「大賞を獲れば映画化」だったものが、「映像化するために賞を与える」に切り替わった時期ではないかと。

そして、その頃から面白味も話題性も乏しくなり…自分も情報を追わなくなった。

とりあえず廉価で本シリーズが並んでいれば入手しておくが、真っ先に積ん読へと躊躇なく放り込んでおく。

むしろ、もう読む気はほとんど無く、単なるシリーズのコレクションと化している。

だって面白くないし、もっと面白そうな作品が積ん読棚で順番待ちしてるし。

しかも、大したページ数でもないのに文庫化に際して上下巻に分けて発行したり、初版時には一冊だった作品を上下巻にして重版にしたりする宝島社のやり方も気に食わない。

本作は楽しめたし、続編や七尾氏の他の作品も読むとは思う。 でも、「このミス大賞」シリーズの息はそう長くないだろうなと、10年以上前に文庫化された本作を手にしながら、「で、今どうなってんの?」と思いつつも調べようという気にはならなかった。


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