本格ミステリ大賞受賞に納得【感想】生首に聞いてみろ
法月綸太郎著。「このミス」1位及び本格ミステリ大賞を受賞した作品。「タイトルも含めて一つの作品」となる良作。自分の評価は「読後にタイトルを見返した時、どれだけ納得感を得られるか」が大きな基準の1つです。角川文庫の平成19年10月25日初版。
概要
一世を風靡した彫刻家の遺作、愛娘をモデルとした石膏像。
何者かにその石膏像の首が切り落とされ、持ち去られる。
これはモデルとなった一人娘への殺害予告なのか。
不自然な行動の末、行方を眩ませた娘。
見え隠れする元ストーカーの姿。
彫刻家の残した願いと想い。
美術評論家の思惑。
切り落とされた首の行方とその意味は…
そして更なる事件が…
私的評価
76点。
端的に面白い。でも、普段読書をしない人、芸能人の書いた本ばかりに飛びつくような人にはオススメしません。そういう方々が読むには重いかと。
感想
いささかショッキングなタイトルでありながら、
でも、このタイトルしかない。
印象深いタイトルが常に頭に置かれ、その意味を追いながら物語を読み進める。
でないと本作の面白さは2~3割減になってしまう。
それぐらい、内容とタイトルの親和性が高い作品。
読んでいる最中は、完成図の分からないパズルに向かっているような感覚。
「本格ミステリとは、そういうもの」ではあるものの、一部に無理矢理ピースをはめ込ませる作品が存在することは否定できず、腑に落ち切らない完成図を見せられてゲンナリすることもしばしば。
しかも、タイトルが印象的であればあるほど、名前負けした残念な作品に陥りやすい。
しかし、本作はそれを見事に破綻なくまとめきっていて良い。
本裏の解説にある「一部の隙もない」の文言には、若干の言い過ぎ感が否めないものの許容範囲内。
複数の賞を獲得しているのも納得の満足度です。
「趣味に読書を挙げる程ではないけれど、本も読むよ」程度の方が読むには、なかなかズッシリとくる良作だと思います。