【感想】葉桜の季節に君を想うということ

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数々の賞を受賞したミステリー。淡い雰囲気を感じさせるそのタイトル。そして「必ず2度3度と読みたくなる究極の徹夜本」という本裏の紹介で購入を決めた一冊。歌野昌午著、文春文庫2009年4月10日第18刷。

概要

同じフィットネスクラブに通う仲間から依頼された悪徳商法の調査。

目の前で自殺を図る女性。

ヤクザへの潜入。

「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵が、様々な興味に首を突っ込んで出合った運命とは・・・

私的評価

72点。

章を追うごとに時間軸の振れ幅が曖昧になる感覚を我慢して、素直に脳内のイメージを追っていけば、これぐらいの点数になる良作。

感想

イニシエーションラブ程「思わず前のページを確認してしまう」ということはない。

でも、どこぞの作家の下手な作品のような後味の悪さは感じさせず、素直に「騙された!」と思える。

いわゆる「叙述トリック」を用いた作品。

この手の作品を読む度に、小説家の小説家たる所以を思い知ると同時に「自分はまだ言葉の表面しか読めてないのか」と未熟さを痛感させられる。

また、自分の中で重要項目の1つ、内容に対するタイトルの「しっくり度」も高い。

タイトルの持つ柔らかで淡くて切ない雰囲気。

このタイトルが、内容と読後感を綺麗にまとめて1つの作品にしている。

【概要】に記した「出会った運命」という言葉。

これを「出会った事件」と表現させないミステリー。

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