たまには高級店での食事もしないとね。【感想】禁断のパンダ

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拓未司著、宝島社2008/1/26第1刷発行。第6回「このミス」大賞受賞作。このシリーズ(このミス大賞)の作品群の中では比較的上位にランキングされる楽しい作品。

概要

神戸でビストロのオーナーシェフをするコウタ。

妊娠中の妻に付き添って出席した結婚式で、伝説の美食家・中嶋と出会う。

中嶋の経営するチャペルの併設されたレストラン。そこは関西の洋食界ではトップに君臨し、半年以上先まで予約の取れないレストランだった。

そんなレストランの味に打ちのめされながらも、コウタは日々万人の胃と舌を満足させる料理を作っていた。

そんな折、中嶋の経営するレストランへの輸入食材に関して一切を請け負う通関会社の社員が刺殺体で見つかった。

それを皮切りに、通関会社の社長やその夫人(中嶋の娘)、さらにはその嫁までが相次いで失踪する。

中嶋の莫大な財産をめぐる相続問題を抱える一族なだけに、様々な憶測と因縁が事件の真相を闇へと葬ろうとする。 そしてその闇は、確実にコウタの元へと忍び寄っていた。

私的評価

71点。

先が読める雰囲気だったものの、「このミス」大賞シリーズには「殺人ピエロの~」のような酷い作品もあるのであまり気にならない。

感想

探偵役が主人公・コウタなのか刑事・青木なのか非常に曖昧で、物語に入り込むには弱い印象。

でも、なぜか満足させられて読後感は悪くない。

ふわっと「何か良かった」と感じる。

巻末の選評によると、選者の方々は一様に「美食ミステリー」として評価。

出てくる料理の表現やその描写が完ぺきだとのこと。

確かに美味しそうだとは思うし、見た目の具体的なイメージも自然と湧く。

その表現力は、素人目にも高いことが分かる。

しかし、自分にとってフランス料理は別世界での食物。

その具体的な味のイメージや食感などは、自分にとって身近ではなく、テレビの中の世界と同じ。

物語への引力が弱い、何もかも作り事の世界です。

横文字が多い分こともあって、リアリティを感じることは出来ない。

そういった意味では、自分にとって美食ミステリーという評価にも共感しきれなかった。

題材が違えばもっと自分にも楽しめたはず。

なので、次回作もきっと手に取るでしょう。

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