「このミス大賞」にしてはアタリ【感想】『屋上ミサイル』

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山下貴光氏の第7回『「このミステリーがすごい!」大賞』で大賞をとった作品。手にしたのは2009/1/24第1刷、宝島社の単行本。2010年版のこのミスに短編を寄せており、その作品が気に入ったので手に取った一冊です。

あらすじ

主人公は高校のデザイン科に通う女の子・辻尾アカネ。

某大国では大統領が誘拐され、テロリストが軍事基地に立てこもる大事件が発生していた。

しかし、そんなことは他人事。出された課題に手がつかない辻尾は、何かヒントが転がっていないかと校舎の屋上を訪れる。

人気のない屋上には、先客が2人。

周囲に目もくれず一心にグランドを見つめる沢木と、学内でも有名な不良・国重。

辻尾と国重が初対面の挨拶にしては多少いびつな会話をする最中、屋上にはさらにいびつな訪問者が現れる。

人殺しの噂がある後輩・平原。

偶然同じ時間に集まった4人は国重の強引な主張により、”屋上部”なるものを創設する。

活動内容は”屋上の平和を守る”。

願掛けのために言葉を封印した沢木

リーゼントをキメ、一人硬派を貫く国重

自殺願望のある平原

そして課題に手がつかない辻尾

大した事件もないだろうとタカをくくっていたが、大きな間違いだった。

学校のマドンナへのストーカー事件や都市伝説・罰神様、

国重が死体の写真を拾えば、沢木は拳銃を拾う。

部活動として各事件の真相を探る度、バラバラだった事件が繋がり謎の深さが増していく。

そして事件は、殺し屋やドラッグ、詐欺師や警察を巻き込んで一つの大きな事件へと発展していく。

私的評価

70点

非常に満足のいく作品。各登場人物のキャラクターが非常に引き立っていて、シリーズ化も期待出来る。(続編はある模様)

感想

深刻になり過ぎない雰囲気作りと、小気味のいい流れ。

良質な古い邦画を観ているような映像が浮かび、スムーズに物語の世界を漂う事が出来る。

終盤、若干ぶっ飛んだ感じがしないでもないが、それまでの展開が上手いから十分に目を瞑れるし、伏線の回収も大ざっぱな感が否めないものの、きちんとされている。

中盤、偶然による事態の進展が多すぎるのも引っかかる。

でも作中人物もそのことを自覚しており、予定調和な雰囲気を払拭してくれる。

何かと引っかかる部分は多々あるが、どれも一応の解や対応があるので好感が持てる。

青春モノではあるが、無闇な青臭さがないのも良い。

このミス大賞系の作品の中では”アタリ”といっていい作品。

「殺人ピエロの~」が非常に残念な作品だったので「このミスはもう終わった…」と思っていたが、少し見直した。

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